2015/12/11津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会を閉じるにあたって

津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会を閉じるにあたって

トンネルの先に(あかり)が見えなくなったまま数ヶ月、いや一年近い年月の流れがあって、しかもその()は日に日に心許無くなりついに(つい)えてしまった・・・。

 準備会から足かけ5年。私たちは何をしてきたのだろう・・・。何をしていたのだろう・・・。実りに結び付けることができなかった長い歳月を、嘆きを表出させることで多少なりとも気持ちの整理をし、津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会は幕引きへの歩みを可能たらしめることができたと思っています。

 もちろんこの年月が無意味であったことなど全くなく、私たちにとって余りある学びの場でした。

 生まれながらにして受け身の存在である子どもを主体者にしていく子ども施策は、子どもの権利条例の理念なくしての成立はないと、ゆるぎない信念にすることができました。

条例の理念のもと、豊かな愛を基本にした「受け止められ体験」によって、とりも直さずそれは主体が保障されるということですが、そのように育った子どもは、必ずや津市の将来否!国の将来の担い手に成長するという確信を持つこともできたのです。

 子どもの権利の基本理念は人権の基本理念と全く同質で、人と人との関係性によって初めて生じる概念です。相互尊重の精神です。子どもに権利を与えると(与えるものではありませんが)我が儘になるというのが多くの大人の弁ですが、それはあまりにも無知としか云いようがありません。

 元来、人権も権利も誰かから与えられるものでも戦って獲得するものでもなく、当然あるべきもの、生まれてきた以上人として当たり前に保障されるべきこと、つまりライツという考え方に他ならないと思うのです。更に付け加えるなら、子どもにとっての権利問題は何故(なにゆえ)54条から成る条文を必要とするのか、その理由(わけ)もこの年月で学んだ数々が、日頃の現場の体験と相俟(あいま)って「子どもは発達段階にある」のだと、実感を伴って腑に落ちることにも繋がりました。だからこそ、発達段階に見合った子どもの主体を認めていく理念が重要であり、それを基本にした大人の適切な向かい合い方、親であるなら子育てのあり方でしょうし、他人として子どもにかかわる場合なら、子ども支援者の質ということになるのだと考えられます。

為政者の交代も行政職員の交代も残念ながら定めです。例え交代があったとしても、施策づくりに照らされる基となるのが条例と、私たちは考えてきました。

子どもの権利条例の制定が子どもの育ちに重要な意味をもつ以上、決して諦めることなく思いを継続させていきたいというのが、幕引時の総意です。

 大勢の方の血と汗ならぬ希望や喜び、そして絶望や怒りなど様々な思いで綴られた5年間でした。会を支え続けて下さった委員のみなさまに心よりお礼を申し上げます。とり分け最後の最後まで責任を全うして下さった方々には、筆舌に尽くし難い感謝です。本当にほんとうに有難うございました。そしておつかれさまでございました。

 「津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会」のもとにあった「子ども委員会」は、津市教育委員会人権教育課の尽力で主旨をご理解下さった市内の中学校からと、個人参加の中学生・高校生とで、構成されてきました。27年3月に条例制定の方向が出されていた問題に翳りがみえだした頃から、会としては何度か子ども委員会に話を投げかけてきました。都度、彼等彼女等の凄さに感じ入りました。なぜなら毎回前向きの姿勢を貫き通すのです。

 母体の津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会の幕引きにあたり子どもたちは、子ども委員会組織をつくり直し「子どもの権利を考える会」として発足させました。目下、毎月数回の集まりを持って組織の体制を固めています。

具体的な動きとしては、「子どもの権利を考える中高生フォーラム」を開催するべく、参加のお願いの呼びかけをしています。

 尚、折角開設したホームページ『津の子ネット』は閉じるに惜しく、しばらくは事務局を担当してきた津子どもNPOセンターが管理していく方向で考えられないかと思案をしているところです。

 最後にもう一度おつかれさまでした!を心より申し上げて、幕引きのご挨拶に致したいと存知ます。

  

津市子どもの権利条例づくり推進市民委員会 委員長 田部眞樹子